研究内容

研究概要

 本研究の目的は、強相関電子系における多体効果の本質を新たな視点で顕在化させるため、主に定常電流下の非平衡状態が創り出す新現象を確立するとともに、その機構の理解を深めることにある。研究対象の中心物質はモット絶縁体Ca2RuO4で、我々が最近発見した、電場誘起の金属-絶縁体転移電流印加で安定化する金属状態の低温現象の詳細を明らかにして、平衡状態では実現しない電子状態の理解を深める。また、類縁酸化物や有機物でも同様の現象を探索することで、Ca2RuO4での新現象の特質と一般性を明らかにする。本研究を通じて、非平衡状態におかれた強相関電子系物質が生み出す創発現象の研究展開の世界的先駆けを目指す。

研究計画・方法

【1】強相関電子系の非平衡定常状態での状態変化の典型例として、Ca2RuO4での現象を確立する。

  1. 電場誘起のモット転移現象を時間・空間依存性と電場方向依存性(異方性)、さらに熱力学特性まで含めて確立し、非平衡定常状態にある強相関電子系のミクロな機構との同定を行う。
  2. 定常電流で維持される低温金属相の物性、特に磁気転移と超伝導の有無を明らかにする。

【2】上と同様の現象を求めて、酸化物・有機物でのモット転移や磁気転移現象の吟味を行う。

 これらを遂行するために、前野(京都大)、寺崎(名古屋大)、中村・鈴木(久留米工大・広島大)、岡(東大)のグループが、ルテニウム酸化物の単結晶育成から、非線形・非平衡伝導の精密測定、そして物性解明まで、これまで培ってきた技術と知見を集結して取り組む。

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