スピン三重項超伝導体Sr2RuO4から強磁性体SrRuO3へのスピン三重項超伝導対の直接注入とその観測

強磁性金属と超伝導のハイブリッド素子は、超伝導の特性を利用したスピントロニクスという観点で興味が持たれています。一般に金属と超伝導を接合すると、超伝導電子対が金属中にしみこむ「近接効果」が起こります。しかし、強磁性金属と超伝導は通常は相性が悪く、強磁性体の中に通常のスピン一重項超伝導対をしみこませようとしても数ナノメートル程度しかしみこまないことが知られています。最近、強磁性体と超伝導体の間に別の磁性層を挿入することで、スピンの自由度を持つスピン三重項超伝導対を一重項対から変換生成し、強磁性体内に超伝導を非常に長い距離しみこませることができることが報告されていますが、この第3の磁性層の制御が難しいことや、この層がスピンの情報を乱してしまうなどの問題点がありました。我々は、スピン三重項超伝導体から強磁性体内に、別の磁性層無しに直接超伝導電子対をしみこませることに、初めて成功しました。具体的には、Au/SrRuO3/Sr2RuO4からなるデバイスの伝導特性を測定し、超伝導対がしみこむ際におこる「アンドレーエフ反射」を観測しました。本成果はNature Communications誌に掲載されました。当研究室のPDのAnwarさんが中心となって行った仕事です。(下図は当該のNature Communications論文より引用。)

2016年10月のTopics Au/SrRuO3/Sr2RuO4デバイスとその測定結果の図

論文情報

M. S. Anwar, S. R. Lee, R. Ishiguro, Y. Sugimoto, Y. Tano, S. J. Kang, Y. J. Shin, S. Yonezawa, D. Manske, H. Takayanagi, T. W. Noh and Y. Maeno
Nat. Commun. 7 13220 Oct. 2016