NMRから見たUCoAlの磁性の一軸性圧力に対する異方的応答

六方晶の結晶構造を持つUCoAlは低温まで常磁性の物質ですが、強磁性不安定点に位置するため、わずかな磁場、圧力、化学ドープによって敏感に磁性が変化する物質として注目されています。常圧ではc軸方向に磁場をかけるとわずか0.6 Tで強磁性に突入するメタ磁性転移を起こしますが、このとき六方晶構造のc軸方向が縮みab面内が広がる顕著な磁歪が生じます。そこで、逆に、一軸性圧力(一軸圧)による異方的な歪みを与えることにより、c軸方向に磁場を掛けなくても磁性を制御できることが期待されます。

私たちはUCoAlの一軸圧による磁性の応答を核磁気共鳴法(NMR)によるミクロな視点から調べました。その結果、ab面内方向の一軸圧ではメタ磁性転移磁場が上昇するのに対し、c軸方向の一軸圧ではc軸方向に磁場を掛けなくても強磁性が出現することを観測しました。これは、ab面内方向、c軸方向の一軸圧がそれぞれ、UCoAlを強磁性から遠ざける、強磁性に近づける、正反対のパラメータであることを意味します。また、磁気ゆらぎを表す核スピン格子緩和率1/T1の測定結果より、ab面内方向の一軸圧では、常圧で観測される20 K付近の磁気ゆらぎの異常が抑制されるのに対し、c軸方向の一軸圧では、この磁気ゆらぎの異常が更に増強され0.16 GPa付近で最大値をとることを観測しました[図]。これは、強磁性転移が二次転移から一次転移に変化する三重臨界点が存在し、その近傍で磁気ゆらぎが発散的に増大していることを示唆しています。

一軸圧は一般的に圧力の不均一性を生みやすく定量的評価が難しいと考えられています。特に、一軸圧とNMR測定を組み合わせた研究報告はこれまでにほとんどありませんでした。今回の研究結果は、一軸圧NMR研究の先駆けともいえる重要な成果といえます。

本研究は東北大学の木村憲彰准教、小松原武美名誉教授(試料作成)との共同研究によるものです。この結果はJ. Phys. Soc. Jpn.誌に掲載されています。

2014年07月のTopicsの図1
図:UCoAlの[温度(T) - b軸およびc軸方向の一軸圧(P||b,c)]相図上での1/T1Tのカラープロット。ピンクのシンボルは強磁性成分が出現する点を表す。

論文情報

Kosuke Karube, Shunsaku Kitagawa, Taisuke Hattori Kenji Ishida, Noriaki Kimura, and Takemi Komatsubara
J. Phys. Soc. Jpn. 83 084706 July 2014