UCoGeにおける垂直磁場で強められる強磁性揺らぎと超伝導

我々は、強磁性体でありながら超伝導を示す特異な物質UCoGe[Ref. 1]について、核磁気共鳴法(NMR)を用いて研究しています。これまでに、本物質に見られるc軸方向のみに大きい磁気揺らぎ(強磁性になろうとする性質)が超伝導発現に重要であることを指摘してきました[Ref. 2]。

本研究では、超伝導発現に重要な強磁性縦ゆらぎと直交する結晶軸のab軸方向に強い磁場(~10テスラ)を印加したとき強磁性縦ゆらぎがどのように変化するのか、その変化と超伝導にどのような関係があるのかを調べました。その結果、磁場をa軸に印加したときは強磁性転移温度に磁場依存性は見られないが、磁場をb軸方向に印加したとき強磁性転移温度が抑制されることがわかりました(下図)。これに対し、超伝導は磁場をb軸方向に印加した場合超伝導転移温度が増大することが知られていました[Ref. 3]。すなわち、b軸に磁場を印加することにより強磁性転移温度が抑制され、低温で強磁性ゆらぎが増大することにより超伝導転移温度が増大したと考えられます。これらの結果は、理論的な示唆[Ref. 4]とも合致し、UCoGeでは強磁性磁気揺らぎを引力機構とした非従来型超伝導が実現していることを確証する結果といえます。

この結果はJournal of the Physical Society of Japan誌で掲載され、Editor's choiceに選ばれました。

2014年6月のTopicsの図1
図: 外部磁場下における磁気揺らぎ(1/T1T)の温度依存性。磁気揺らぎがピークをとる温度が磁場下における強磁性転移温度を示す。b軸に磁場をかけた時のみ強磁性転移温度が磁場により抑制され、測定最低温度(T=2 K)において磁気揺らぎが増大していることが分かる。

 

[1] N. T. Huy, et al., Phys. Rev. Lett. 99, 067006 (2007).

[2] T. Hattori, et al., Phys. Rev. Lett. 108, 066403 (2012).

[3] D. Aoki, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 78, 113709 (2009).

[4] V. P. Mineev, Phys. Rev. B 83, 064515 (2011).

論文情報

T. Hattori, K. Karube, K. Ishida, K. Deguchi, N. K. Sato and T. Yamamura
J. Phys. Soc. Jpn. 83 073708 Jun. 2014