UCoGeの超伝導状態におけるスピン磁化率

本研究は超伝導下における強磁性超伝導体UCoGeの59Co NMR Knight shiftを測定から、スピン三重項の実現を支持するものです。

2000年にUGe2において、強磁性下で超伝導が生じることが発見されて以来、ウラン系強磁性超伝導体(UGe2, URhGe, UCoGe)はスピン三重項超伝導が実現している系として注目を集めています。電子が反平行スピン対を作って起きるスピン一重項超伝導と異なり、平行スピン対を作るスピン三重項超伝導は、有限の磁化が抵抗なく流れる状態であり、基礎研究のみならずその応用面からも期待される超伝導状態です。しかし、多岐に渡る超伝導のほとんどはスピン一重項超伝導であることが確認されており、現在スピン三重項超伝導の実現が確実視されている物質はわずか数種類であり、それもいまだ完全なコンセンサスが取れていないのが現状です。

このような中、強磁性超伝導体UCoGe[1]ではスピン三重項超伝導が生じている様々な状況証拠が挙げられてきています。その超伝導が、ミクロに見て強磁性と共存するものであること[2,3]、通常なら弱いはずの磁場に対して非常に強固であること[4]、超伝導を作るための機構がまさに強磁性になろうとする性質からきていること[5]などです。しかし、最終的に超伝導下におけるスピンの詳細を決定するためには、超伝導下でのスピン磁化率を直接的に測定することが必要となります。それを成し得る数少ない測定手法の一つがNMR Knight shiftの測定です。本研究では超伝導下において、磁化困難軸方向のナイトシフトが変化しないことを確認しました(図)。これはスピン三重項超伝導でなければ説明できない結果です。

強磁性超伝導体の超伝導状態におけるKnight shiftを測定し、スピン磁化率を直接的に見積もったのは本研究が初めてになります。

2013年8月のTopicsの図1
図 :UCoGeの超伝導転移温度前後におけるKnight shift(上図)及びac磁化率(下図)の変化。ac磁化率は超伝導転移温度(点線)以下でマイスナー効果の影響を受けて減少する。マイスナーが確認されている磁場・温度域になってもKnight shiftが大きく変化している様子は見られなかった。

この結果はPhysical Review B誌に掲載されました。


[1] N. T. Huy, et al., Phys. Rev. Lett. 99, 067006 (2007).
[2] T. Ohta, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 79, 023707 (2010).
[3] A. de Visser, et al., Phys. Rev. Lett. 102, 167003 (2009).
[4] D. Aoki, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 78, 113709 (2009).
[5] T. Hattori, et al., Phys. Rev. Lett. 108, 066403 (2012).

論文情報

T. Hattori, K. Karube, Y. Ihara, K. Ishida, K. Deguchi, N. K. Sato and T. Yamamura
Phys. Rev. B. 88 085127 Aug. 2013