微視的観点からみたBaTi2Sb2Oの通常状態と超伝導状態

BaTi2Sb2Oは新しく発見されたTc ~ 1 Kの超伝導体です。この物質は50 K付近で何らかの相転移に伴う電気抵抗や磁化率の異常を見せた後に、超伝導になる点や3d電子を1個含む二次元Ti2O面が超伝導に重要である点など銅酸化物高温超伝導との類似点が多くあることから注目が集まっています。

本論文では微視的な測定手段であるNMR/NQRを用いてSbサイトにおける電子状態の変化から50 K付近の異常の起源や超伝導の対称性について調べました。

図1は50K(上)と4.2K(下)でのNQRスペクトルです。 NQRスペクトルは温度を下げることによって全体的にシフトしますが、顕著な広がりや分裂は観測されませんでした。また、スペクトルからNQRパラメーターを見積もると高温で結晶の4回対称性を反映して0であった面内の非対称性パラメーターが低温で有限の値を持ちました。

また、図2に示すように4回対称性が破れたサイトで測定した核スピン-格子緩和率1/T1Tc直下でコヒーレンスピークを示した後、指数関数的に減少しました。

これらの結果は50K付近の異常が整合電荷密度波である可能性が高いこと、この電荷密度波と超伝導が微視的に共存していること、超伝導の対称性がs波であることを示しています。

2013年2月のTopics BaTi2Sb2Oの図a
図1 : ~50K(上)と4.2K(下)でのNQRスペクトル。
2013年2月のTopics BaTi2Sb2Oの図b
図2 : 4回対称性が破れたサイトで測定した核スピン-格子緩和率1/T1

本研究は京都大学大学院工学研究科の中野晃佑氏、矢島健助教、陰山洋教授(試料作製)との共同研究です。この結果はPhys. Rev. B誌にRapid Communicationとして掲載されています。

論文情報

Shunsaku Kitagawa, Kenji Ishida, Kousuke Nakano, Takeshi Yajima, and Hiroshi Kageyama
Physical Review B 87 060510(R) Feb. 2013