BaFe2(As1-xPx)2における磁性と超伝導の空間的共存/競合

 従来、超伝導は磁場に対して強い影響を受けるため、磁性と超伝導は共存できないと考えられてきました。ところが、1979年に発見された重い電子系化合物を始め、1986年の銅酸化物高温超伝導体、2008年の鉄系超伝導体など、磁性相に隣接した超伝導相を持つ物質群が見つかり、両相が重なる領域で微視的共存状態が実現している可能性が示唆されてきました。

我々はこの中でも、鉄系超伝導体の一つであるBaFe2(As1-xPx)2[1]に着目してP-NMR測定を行っています。これまでに、この系では二次元反強磁性揺らぎが非従来型高温超伝導の発現に主要な役割を果たしていること[2]、Tcの最も高いx=0.33において超伝導状態でも残留状態密度が存在し、超伝導ギャップにノードが入っていること[3]を明らかにしてきました。今回、磁性相と超伝導相の境界領域に位置するx=0.25と圧力 P ≈ 2 GPaを加えたx=0.20について、核スピン-格子緩和時間測定により磁気秩序したサイトがさらに低温で超伝導転移すること(図(c))、すなわち磁性と超伝導の微視的な共存状態になることを明らかにしました。また、NMRスペクトルの温度変化(図(a))から磁気秩序温度以下で発達した磁気モーメントが、超伝導転移温度以下で抑制される振る舞いが見られました(図(b))。このことは磁性と超伝導が空間的に共存しながらも秩序変数同士が競合関係にあり、重い電子系などに見られた両者の共存状態とは異なる新しい関係が実現していることが明らかになりました。またこのような微視的共存/競合状態の実現は、現在活発に研究されている鉄系超伝導の対形成機構に理論的制約を課す意味でも重要な結果となります。

この結果はOPEN SELECTとしてJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載され、無料で読むことができます。

2012年2月のTopics2の図

[1] S. Kasahara et al., Phys. Rev. B 81, 184519 (2010).

[2] Y. Nakai et al., Phys. Rev. Lett. 105, 107003 (2010).

[3] Y. Nakai et al., Phys. Rev. B 81, 020503(R) (2010).

論文情報

Tetsuya Iye, Yusuke Nakai, Shunsaku Kitagawa, Kenji Ishida, Shigeru Kasahara, Takasada Shibauchi, Yuji Matsuda, and Takahito Terashima
J. Phys. Soc. Jpn. 81 033701 Feb. 2012