空間反転対称性の破れた5d電子系超伝導体CaMSi3 (M=Ir,Pt)の結晶評価と物性

空間反転対称性の破れに伴う特異なスピン軌道相互作用がある状況では、超伝導電子対が「スピン一重項-三重項混合状態」となり得ることが最近になって指摘され、様々な新奇現象が期待される系として注目を浴びている[1]。特に「Rashba型」と呼ばれるスピン軌道相互作用が生じる物質は、基底状態及び様々な新奇現象が理論面から詳細に解析されており、従って実験との比較検証が可能な唯一の系であり興味深い。

今回我々は、上に述べた「Rashba型スピン軌道相互作用」を有する物質群に注目して物質開発を行い、多結晶CaIrSi3, CaPtSi3の作製に成功した(結晶構造は下図(b)参照)。これらの物質について、名古屋大学のグループと共同で高輝度放射光施設SPring-8にてX線回折を行い、結晶パラメータの精密測定を行った。また超伝導特性を抵抗率、交流磁化率、比熱測定を用いて調べ、下図(a)に示す温度ー磁場相図を得た。図からわかるように、電気抵抗率、交流磁化率から求めた転移温度に大きな違いが見られ、この結果から擬二次元の超伝導状態が実現していることが示唆される。また比熱測定より、これらの超伝導体は超伝導ギャップ関数にノードを持たないフルギャップ超伝導体であることを明らかにした。 さらに今まで未知であったCaIrSi3の不純物相が新物質CaIr3Si7であることを突き止めた(結晶構造は下図(c)参照)。

今後も、強磁性揺らぎと超伝導との関連性を明らかにするべく、実験を進めていく予定です。

2011年02月のTopicsの図1
(a) CaIrSi3, CaPtSi3超伝導相の上部臨界磁場-温度相図.抵抗測定と交流磁化測定より求められた転移温度に大きな差があることがわかる。 (b) CaIrSi3の結晶構造。 (c)CaIr3Si7の結晶構造。

この結果はPhysical Review B 誌に掲載されました。

[1] S. Fujimoto, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 051008 (2007).

論文情報

G. Eguchi, D. C. Peets, M. Kriener, Y. Maeno, E. Nishibori, Y. Kumazawa, K. Banno, S. Maki, and H. Sawa
Phys. Rev. B 83 024512 Jan. 2011