鉄ニクタイド高温超伝導体レビュー

昨年2008年のLaFeAsO1-xFx における超伝導転移温度 Tc = 26 Kという高い温度での超伝導の発見に端を発し、Feの二次元正方格子をもつ超伝導体( 下図参照、総称して鉄ニクタイド系と呼ばれます) が次々と発見されています。これまでに発見された最高TcはSmFeAsO1-xFxにおいて55Kにまで達し、銅酸化物高温超伝導体に次いで二番目に高い転移温度の記録を持っています。 現在、その高い転移温度の起源を明らかにしようと、この分野の研究は世界的に非常に盛んに行われています。ちなみに、鉄ニクタイド高温超伝導を最初に報告したLaFeAsO1-xFxの発見論文 ( Kamihara et al. J. Am. Chem. Soc. 130 (2008) 3296 ) は2008年の引用数世界一位の論文でした。

今回私達は、鉄ニクタイド高温超伝導体の発見者の一人である、東京工業大学の細野秀雄教授とともに、
"To What Extent Iron-Pnictide New Superconductors Have Been Clarified: A Progress Report"
というタイトルで、2008年末までに公表された鉄ニクタイド系の、主に実験的な面に関するレビューペーパーをJournal of the Physical Society誌において発表しました。この論文では、主に1111系 (LaFeAsO1-xFx など) と122系 (Ba1-xKxFe2As2 など) に焦点をおいて重要と思われる論文をピックアップして以下のようにまとめていますので、鉄ニクタイド超伝導に興味がある方のお役にたてれば幸いです。

  1. 鉄ニクタイド系の結晶構造 (1111, 122, 111, 11系)、
  2. Fermi面 (バンド計算、角度分解光電子分光 (ARPES)、量子振動実験)
  3. 輸送現象 (電気抵抗)
  4. 母物質の磁気秩序および構造相転移
  5. 核磁気共鳴 (NMR) 実験からみた常伝導状態
  6. 上部臨界磁場Hc2およびその異方性
  7. 超伝導ギャップ構造 (ARPES、磁場侵入長、NMR)
  8. Cooper対の対称性 (スピン状態) (NMR)
  9. 超伝導転移温度Tc の同位体効果
  10. Tc と四面体におけるFe-As-Feの局所角度との関係 (中性子散乱)
  11. 超伝導ペアリングの理論
2009年6月のTopics

論文情報

Kenji Ishida, Yusuke Nakai, and Hideo Hosono
J. Phys. Soc. Jpn. 78 062001 June 2009