課題演習B4「高温超伝導」

担当教官
前野悦輝(5号館138号室)、石田憲二(5号館140号室)、米澤進吾(5号館139号室)、北川俊作(5号館140号室)
ティーチング・アシスタント(TA)
諏訪(5号館139号室)、沼崎(5号館139号室)

はじめに

本課題演習では、固体物理学の中でも、超伝導など固体中の電子に関連した基本的物性について、実験およびセミナーを通して学びます。実際、固体の性質の多くを電子の振舞いが支配していると言っていいでしょう。固体物理学では、様々な物質が示す多彩な物理現象を研究対象としますが、これらの現象は、多数の構成粒子(例えば電子や原子)が互いに影響を及ぼしあうことによって生じます。有名な理論物理学者フィリップ・アンダーソンの言葉 More is different.は、単純な構成要素でも多数集まって相互作用することにより、全体としては予想もつかないような劇的な振舞いを示しうることを表しており、これは、固体物理学の醍醐味と言えるでしょう。

本課題演習の実験では、実際に銅酸化物高温超伝導体を合成し、その低温での電気的・磁気的特性を測定します。セミナーは、実験と関連した内容を選んで行い、電子物性の理解を深めることを目指します。また、自分たちの行った実験を第三者に伝える手段として、レポートや口頭発表の技法も重視したいと考えています。

2017年度 前期の日程

2016年度前期はYBa2Cu3O7-δの合成を行った後、2つのグループに分かれて実験をします。1つのグループは「YBa2Cu3O7-δの酸素欠損量による結晶構造および超伝導性の変化」の実験を、もう1つのグループには「YBa2Cu3O7-δの元素置換による結晶構造および超伝導性の変化」の実験をしてもらう予定です。セミナーはC. Kittel著「Introduction to Solid State Physics 8th Ed.」のChapter 10およびAppendix H、十倉好紀著「強相関電子と酸化物」の1〜2章を基に行います。

実験室 :6号館308号室

ゼミ部屋:5号館128号室

2017年度 後期の日程

To be annouced.

配布プリント

過去に使ったプリントを以下に挙げておきます(パスワードプロテクト有り・授業の際に教えます)。

2017年度前期 実験プリント

2016年度後期 全プリント

2016年度後期 実験プリント(英語バージョン含む)

2016年度後期 小セミナープリント

一部セミナーを英語で行ったので、ほかの年とはプリントの構造が異なります。

2016年度前期 全プリント

2016年度前期 実験プリント

2016年度後期 小セミナープリント

セミナー

超伝導・磁性、特に以下のトピックを中心にして行います。

セミナー等で用いる資料・文献などは、随時配布・指定します。 過去に用いたものを幾つか挙げておくと

などがあります。

実験

2グループに分かれて、物質合成とその低温での物性測定(電気抵抗と磁化測定)などを行います(テーマは毎年変わる可能性があります)。

両グループ共通
銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-yの合成とその超伝導について
グループ1
  • 銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-yにおける超伝導転移温度の酸素欠陥y依存性について(2008年度後期まで)
  • 銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-yにおけるCu-NQR(2009年度前期)
  • 銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-yの超伝導の元素置換効果(2009年度後期)
  • YBa2Cu3O7-δの酸素欠損量による結晶構造および超伝導性の変化(2010-年度)
  • YBa2Cu3O7-δの元素置換による結晶構造および超伝導性の変化(2014年度)
グループ2
  • マンガン酸化物La2/3Ca1/3MnO 3とNd1/2Ca1/2MnO3の物性について(2008年度前期まで)
  • クラーク素子を用いた超伝導接合の実験(2008年度後期)
  • 層状銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8のウィスカー状単結晶の合成(2009年度)
  • YBa2Cu3O7-δの元素置換による結晶構造および超伝導性の変化(2010-年度)
高温超伝導体YBCO 高温超伝導体YBCO

実験では、銅酸化物高温超伝導体のひとつである、YBa2Cu3O7-yをまずつくります。この超伝導体が、超伝導状態になる温度(転移温度)は、最高で約92ケルビンと比較的高いので、液体窒素(約77ケルビン)を用いて冷やすことによって超伝導状態を実現できます。上の写真は、液体窒素で冷やしたYBa 2Cu3O7-y(黒色)の上に、小さな磁石(金色)が浮かんでいるところです。これも、超伝導の一つの性質です。

レポートについて

レポートを書くということ

近い将来最先端の研究を始めたときに、「自分たちの行った研究の内容や研究成果の意義などをレポートや論文として発表して他の人に伝える」というプロセスはデータを出すプロセスと同じくらい非常に重要です。また、研究者になるという道に進まなくても、簡潔明快な文章を書くというスキルはどんな職業を選ぶにせよ必要になってくるスキルです。レポートを書くことを「文章を書くスキルを身に着けるためのトレーニング」として捉えて、しっかりとしたレポートを書くように努力してください。

レポートを書く上で特に注意してもらいたいのが、以下の3点です。

「正確」かつ「簡潔」に書くことの必要性はすぐにわかると思います。これらに加えて、意外に意識されていないかもしれませんが、3番目の「読み手にストレスを与えない」という観点も重要です。読み手にストレスを与えないということは、単に文章が読みやすくなるというだけでなく、誤解をなくし正確にこちらの言いたいことを伝えることにもつながります。

さらにもう一点意識してほしいのが、

という点です。 なぜなら、今後、論文を書いたり、申請書を書いたり、就職活動をしたりといったさまざまな機会で「研究の面白さや重要性を述べる」ことが必要となることがたくさんあるからです。

レポートの構成

「正確」かつ「簡潔に」書くためのレポートの標準的なフォーマットはほぼ世界共通に決まっているといえます。その例を挙げます。

タイトル・著者氏名・所属
概要
数行から10数行で研究の内容をまとめます。読むだけで論文全体が俯瞰できるような文章が望ましいです。
本文
研究の内容を記述します。例えば以下のような章立てにするとよいでしょう。
序論
研究の背景、目的、重要性など。
手段(実験方法)
測定原理、方法など。図を上手く使ってください。
結果(実験結果)
測定データ。図表を上手く使ってください。
考察
文献も参照しつつ結果から何が言えるのかを考察。
結論
研究のまとめ。今後の課題など。
謝辞
共同実験者やそのほかお世話になった人への感謝の気持ちを述べます。
感想
実験や、それ以外にもレポートや発表会などについて、感想を書いてください。次期以降の課題演習の向上に参考にさせてもらえればと思っています。
参考文献
付録(必要であれば)

レポートの構成についてのより詳細な情報や図表の詳細は 物理の英語資料第2章もご覧下さい。

発表会について

この課題演習ではセメスターの途中に小発表会を1回、セメスターの最後に最終発表会を1回行います。小発表会は発表の練習という位置づけで、YBa2Cu3O7-yの合成と超伝導の確認までについて各グループに発表をしてもらいます。最終発表会では全研究内容について各グループに発表してもらいます。

各グループとも、全員で分担して発表を行ってください。また、発表の長さはグループ全体で20分程度を目安にしてください。最長でも30分以内としてください。その後、質疑応答などがあります。通例では、全体(2グループの合計)で2時間程度かかっています。

基本的な注意事項

当然のことですが、発表で最も大事なのは、「聴き手」に伝えたいことが伝わることです。これを第一に考えて下さい。(注:教官には通じても、相手のグ ループには内容を分かってもらえないような発表は、不適切です。)勿論、話す内容や話し方も重要ですが、ここでは、最も基本的と思われる2点を示します。

全体の構成を考えること
この点に関しては、あらかじめ論文形式のレポートを提出してあるはずなので、それを基本線にすればいいでしょう。(時間の制限なども考えて、内容の取捨選択が必要です。但し、最初に表紙のページ(題名や氏名等を含むもの)、最後に「まとめ」または「結論」のページだけは必ず作って下さい。)
個々のページが、分かりやすいこと。
二つ目の点に関しては、字の大きさや図の見やすさを考えて下さい。(例えば、プロジェクターで映したときに、小さすぎる文字や込み入りすぎた図は不適切。)また、適切な色使いを工夫してみて下さい。