Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries

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■ 受賞ニュース

水島 健 大阪大学 大学院基礎工学研究科

第9回凝縮系科学賞
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山影 相 名古屋大学 大学院工学研究科山影 相(名古屋大学 大学院工学研究科)

第8回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「トポロジカル絶縁体の輸送理論における先駆的研究」

このたび,トポロジカル絶縁体・超伝導体における輸送理論の研究で第8回日本物理学会若手奨励賞(領域4)を受賞しました.通常の電子とは異なり,トポロジカル絶縁体はその表面にディラック電子,トポロジカル超伝導体の表面ではマヨラナ粒子が現れることが知られており.これらの新奇粒子が示す輸送現象あるいは電磁応答現象はデバイス応用の観点からも注目を集めています.相転移の立場から見ると,トポロジカル相は対称性の破れを伴わない,すなわち従来のランダウ理論とは異なる相分類であり,トポロジカル相転移の臨界現象も多くの研究者の興味を惹きつけてきました.その一例として,乱れによって誘起されたトポロジカル絶縁体(トポロジカルアンダーソン絶縁体と呼ばれている)が系がクリーンな場合には実現しない新しい相ではないかという予想がありましたが,我々はこれが正しくないことを示しました.一方で,乱れによって通常絶縁体→金属→トポロジカル絶縁体→金属→通常絶縁体といった多重転移が起こるという豊富な相構造があることも明らかにしました.また,トポロジカル超伝導体ではその表面に着目すると,特徴的な臨界現象が起きることも分かりました.トポロジカル超伝導体から通常の超伝導体へ相転移すると表面のマヨラナ粒子は消失しますが,転移と同時に消えてしまうか,転移点直上では生き残っているか,という二通りの臨界性があることが明らかになりました.後者の場合にはマヨラナ粒子の寄与により,転移近傍で表面を介した電気伝導が増大されます.この臨界性はこれまでは知られていませんでしたが,近年盛んに実験が行われているスピン軌道相互作用と波超伝導体から作製したトポロジカル超伝導体ではその新しい臨界現象が起きることも判明しました.さらに,ドープされたトポロジカル絶縁体におけるトポロジカル超伝導状態の輸送現象も調べ,表面状態のエネルギー分散の構造が変化(リフシッツ転移に対応)し,そこで表面の状態密度が巨大になることを明らかにしました.これも表面における臨界現象として解釈できます.この現象に起因して,3次元のトポロジカル超伝導体と常伝導体の接合系におけるトンネルコンダクタンスは零電圧でピークを示します.この結果から,大阪大の安藤グループのCuxBi2Se3 におけるポイントコンタクトの実験で見られたコンダクタンスの零電圧ピークが,トポロジカル超伝導状態を強く示唆するものであることが分かります. 
 ここまで述べてきたように,トポロジカル相は様々な相構造や表面臨界現象を示すことが分かってきました.これを契機として,さらにトポロジカル絶縁体・超伝導体の相転移とその臨界現象の探索やそれらの統一的理解といった研究分野が拡がっていくことを期待しています.

岩澤 英明 広島大学 放射光科学研究センター岩澤 英明(広島大学 放射光科学研究センター)

第8回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「高分解能角度分解光電子分光による強相関電子系の多体相互作用の研究」

角度分解光電子分光(Angle resolved photoemission spectroscopy: 以下 ARPES)を用いた「多体相互作用」に関する研究に対して、第8回日本物理学会若手奨励賞(領域5)を受賞しました。近年、ARPES の高分解能化が進んだことで、低エネルギーの準粒子の運動に関わる「電子・ボゾン相互作用」(ボゾン:格子振動や磁気揺らぎなど)に対する研究が、銅酸化物高温超伝導体を中心に広く行われるようになりました。しかし、これまでのARPES を用いた「電子・ボゾン相互作用」の評価においては、強相関電子系の電子状態に大きな影響を与える「電子相関」が定量的に扱われていなかったために、多体相互作用の強さは正しく評価されていませんでした。本研究では、統一的な視点から電子相関と電子・ボゾン相互作用の評価を行い、電子相関と電子・ボゾン相互作用の各々の強さを定量的に測る手法(=ものさし)の開発に成功しました。これにより、典型的な強相関電子系であるルテニウム酸化物超伝導体(Sr2RuO4)において、電子相関と電子・ボゾン相互作用の強さ、ならびに、準粒子の有効質量の増大に対する各相互作用の寄与を定量的に評価することが出来ました。今後、この相互作用の強さの「ものさし」を様々な物質に応用することで、物性と相互作用の強さの関連性が見えてくるのではないかと期待しています。

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吉川 豊  京都大学 大学院理学研究科 吉川 豊( 京都大学 大学院理学研究科)

第6回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「超放射ラマン散乱を用いた物質波のコヒーレント制御」

冷却原子気体における超放射ラマン散乱の実験的研究に対して、第6 回日本物理学会若手奨励賞(領域1)を受賞しました。超放射ラマン散乱(Superradiant Ramanscattering:以下SRS) は、1954 年にDicke によって提唱された「超放射」と呼ばれる集団的な緩和現象の一種です。SRS は、照射する励起光のパラメータを動的に変えることで系の時間発展を自由に制御できるという、Dicke 超放射にはない特徴を持っています。これを最大限に利用することで、原子波の性質を高精度に調べたり、その量子状態をコヒーレントに制御したりすることが可能になります。本研究では、ボース凝縮体におけるSRS の基本的な性質の確認から始まり、非凝縮気体でのSRS の観測、superradiant pump-probespectroscopy と呼ばれる分光法による原子波の1次相関関数の精密測定、光位相共役過程に類似した双方向性SRSによる原子コヒーレンス−光子間の高効率変換の実現、さらには異なる2 つの運動量モードの原子コヒーレンスを1つのボース凝縮体中に保存して独立に制御するホログラフィック多重保存の実験的検証にも成功しました。これらの成果は、任意の光子数状態発生や量子原子波制御など、量子情報処理や原子波光学等の研究分野における新しい実験技術の礎になるものと期待されます。

村川 智  慶應義塾大学 理工学部  村川 智(慶應義塾大学 理工学部)

第6回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「超流動3He の表面状態、特にマヨナラ準粒子状態の解明」

村川智さんは横波音響インピーダンス測定による超流動3He の表面状態研究により、第6回日本物理学会若手奨励賞を受賞されました。トポロジカル超流動体は、バルク状態のトポロジカルな特性が表面状態の存在を規定するバルク- エッジ対応と呼ばれる性質を持つと予測されていました。村川氏は、東京工業大学に博士研究員として在籍中に、壁を4He 薄膜でコートすることにより境界条件が変化することを利用して、超流動3He の表面束縛状態の系統的振る舞いを調べました。この研究により、壁が滑らかな場合に超流動3He の表面に線形の分散関係をもったギャップレス表面状態が存在することが明らかになり、トポロジカル超流体とその表面のマヨラナ粒子の実在が示されました。現在は慶應義塾大学で超流動4He を用いたジョセフソン素子の開発を進められており、さらなるご活躍が期待されます。

水島 健  岡山大学大学院 自然科学研究科  岡山大学大学院 自然科学研究科

第7回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「超流動3He および冷却原子気体におけるマヨラナ状態の理論的研究」

超流動3He と冷却原子気体系においてマヨラナ粒子の研究を展開した研究業績に対して第7 回日本物理学会若手奨励賞を受賞しました。スピン3 重項超流動体である3He-A 相やB 相、或はp 波フェッシュバッハ共鳴近傍の冷却フェルミ原子気体にはそのバルクにおいて定義される非自明なトポロジカル不変量に起因して、半整数・整数量子渦の芯や表面に零エネルギー準粒子が存在し得ます。そのミニマムな模型としてスピン偏極したp 波超流動体を考え、量子渦の芯や表面に現れる零エネルギー準粒子状態の性質を明らかにしました。この系においてクーパー対間の引力を極端に強めると、強結合効果に起因したトポロジカル相転移がバルクにおいて生じます。このトポロジカル相転移とマヨラナ粒子との関連性を明らかにしました。これらの知見を基盤として、最近では、スピン3 重項超伝導体の量子渦に内在するマヨラナ粒子と奇周波数クーパー対相関との関係性や、磁場中の超流動3He-B における自発的対称性の破れを伴うトポロジカル相転移の存在といった新しいトポロジカル量子現象を抽出することに成功しています。

古川 俊輔  東京大学 大学院理学系研究科  古川 俊輔(東京大学 大学院理学系研究科)

第7回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 
「量子多体系におけるエンタングルメント・エントロピーの研究」

このたび東京大学大学院理学系研究科助教で本領域の特任研究員であった古川俊輔氏が第7回日本物理学会若手奨励賞を受賞されました。授賞理由は「量子多体系におけるエンタングルメント・エントロピーの研究」です。古川氏は、トポロジカル秩序やフラストレート量子スピン系など物性理論の幅広い領域にわたって活発に研究活動されてきました。また、エンタングルメントなどの量子情報の概念を物性理論へ応用することによって顕著な業績を挙げてこられました。 
 受賞対象となった研究は、3 編の論文[1-3] です。古川氏はこれらの論文においてトポロジカル相から量子臨界系までまたがる広い対象において、エンタングルメント・エントロピー(EE) がいかに系の普遍的性質と結びついているかを示す重要な成果を挙げました。古川氏らは、2006 年にKitaev らが予言した、トポロジカル秩序を特徴づける普遍的エントロピーの存在を翌2007 年に量子スピン液体の模型において数値的に実証しました[1]。この結果は、その後、Kitaev らの予言を量子スピン液体研究に広く応用するさきがけ的研究となりました。一次元量子臨界系ではEE に共形場理論のセントラル・チャージが現れることが知られていましたが、古川氏らは二領域間の相互情報量から共形場理論のより詳しい情報を得ることができることを提案しました[2]。特に朝永・Luttinger 流体においては、相互情報量はいわゆる朝永・Luttinger 液体パラメーターのみによって普遍的に定まることを数値的・解析的に示しました。この結果はそれまで見逃されていたEE と共形場理論のより深い関係を明らかにしたものとして高く評価されています。さらに複数の朝永・Luttinger 流体が結合した系のEE を研究し[3]、高次元量子臨界系でのEE の有用性を探求しました。 
 3 編の論文[1-3] は、古川氏の滞在したCEA Saclay ( フランス)、トロント大学(カナダ)の研究者との共同研究で、左は論文[1] の共同研究者との写真です。

写真:古川氏(左)と共同研究者のG. Misguich氏(右)。
2006年、フランス、ロワールにて。
[1] S. Furukawa and G. Misguich, Phys. Rev. B 75, 214407 (2007).
[2] S. Furukawa, V. Pasquier, and J. Shiraishi, Phys. Rev. Lett. 102, 170602 (2009).
[3] S. Furukawa and Y. B. Kim, Phys. Rev. B 83, 085112 (2011).

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川口 由紀  東京大学 大学院理学系研究科 東京大学 大学院理学系研究科 川口 由紀

井上リサーチアウォード
受賞理由 「スピノールB E C における量子多体効果の研究」

川口由紀さんは、スピンという内部自由度を持った原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC) の量子多体効果に関する研究に対して、井上 リサーチアウォードを受賞されました。井上リサーチアウォードは自然科学の基礎的研究で優れた業績を挙げた将来性豊かな若手研究者の支援を目 的としたものであり、物理学分野では川口さんが初めての受賞になります。 通常のBECとは異なり、メゾスコピック系で実現されるフラグメ ントBECでは複数の1粒子状 態にマクロな数の原子が凝縮する結果、非自明な凝縮状態が生じます。川口さんは、マクロな系からメゾスコピック系へと系のサイズを連続的に変化させることで、対称性の破れ・回復、すなわちフラグメントBECの出現と崩壊が制御できる点に着目し、量子揺らぎおよび熱揺らぎによる対称性の破れと回復のダイナミクスを明らかにする研究を進めています。このようなダイナミクスの研究は、宇宙・高エネルギー物理から超伝導・超流動まで自発的に対称性の破れた系全般に広く波及効果を及ぼすものと期待されます。

沙川 貴大  東京大学 大学院理学系研究科 東京大学 大学院理学系研究科 沙川 貴大

第5回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 「フィードバック制御がある系の情報と 熱力学の展開」

沙川貴大氏はフィードバック制御がある系において情報と熱力学を結び付ける情報熱力学の研究に対して第5回日本物理学会若手奨励賞を受 賞されました。もしもミクロな知的生物が存在して気体分子の速度を識別できれば、熱力学の第二法則が破れてしまうーこれがマックスウェルが150 年前に指摘したパラドックスである。沙川氏はマッ クスウェルのデーモンが情報の測定と消去に必要な仕事を、量子測定理論と熱力学を組み合わせることによって導くことに成功し、ミクロなレベルの情報処理が熱力学の第二法則と矛盾しないことを示しました。また、同じ理論的枠組みでJarzynski の等式をフィードバック制御が存在 する場合に拡張しました。これらの予言は最近になってコロイド粒子を用いて実験的に確認されました。

横山 毅人 東京工業大学 大学院理工学研究科 物性物理学専攻 東京工業大学 大学院理工学研究科 物性物理学専攻 横山 毅人

第5回日本物理学会若手奨励賞
受賞理由 「強磁性体/ 超伝導体接合の理論」

 強磁性体/ 超伝導体接合の研究はスピントロニクスの分野の発展とともに注目を集めており、磁性と超伝導が共存する系の研究は、実験技術の進歩と連動して飛躍的に進んできた。従来、磁性と超伝導は単に競合するものととらえられていたが、横山氏は磁性と超伝導の間の非自明な関係を様々な視点から示した。特に、(1) 奇周波数超伝導、(2) スピン物性、(3)“ 相対論的” 効果という観点からの種々の予言を行った。これらの業績に対して、第5 回日本物理学会若手奨励賞を受賞されました。 拡散伝導領域にある強磁性体中に侵入するクーパー対は有限の運動量を持つため、その近接効果は非磁性金属における近接効果とは質的に異なる事が知られている。特に、2001 年ドイツのルール大学のEfetov らのグループによって強磁性体/ 超伝導体接合において奇周波数(時間について奇関数の)トリプレットクーパー対が発現することが予言され、国際的に注目を集めることになったが、横山氏はこの重要な問題に初期の段階から取り組んだ。特に、強磁性体/ 超伝導体接合系における近接効果を研究し、強磁性体領域に形成される共鳴状態の性質を調べ、準粒子状態密度にゼロエネルギーピークが現れる条件を明らかにした。さらに、奇周波数トリプレット超伝導の状態密度との関係について調べ、トリプレットクーパー対の存在が、強磁性体中の状態密度のゼロエネルギーピークとして反映されることを明らかにした。また、強磁性体中に誘起された奇周波数トリプレットクーパー対の示す異常なマイスナー効果や、非磁性体/ 超伝導体接合においても界面の散乱行列がスピン依存性を持つ場合には奇周波数トリプレットクーパー対が現れることなども明らかにした。現在NTTを中心とする実験グループにより横山氏の理論的予言の実験的な検証が進められており、奇周波数超伝導の研究の新たな展開が期待されています。

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